主に有機電子化学トランジスタ(OECT)分野において、新しい電子材料をつくっています。特に、従来は有機ELや太陽電池への活用が知られている導電性高分子について、有機物ならではの特徴である生体との親和性に着目し研究を進めています。生体の近くあるいは中で使えるものをめざして、「神経模倣素子」と「バイオセンサ」の開発を行いました。
まず、神経模倣素子として、導電性高分子にイオン伝導性高分子を混合した活性層を用いて応答速度を制御することで、“神経のような動き”をする電子部品の作成に成功しました。次にこの神経模倣素子の応答がイオンの動きによることを明らかにし、応答速度の決定要因を明らかにしました。さらに、これらの知見をもちいて、温度が変化しても安定した信号を計測できる温度応答性高分子を導入し、バイオセンサとしての応用が期待される高分子薄膜を開発しました。
もともと導電性高分子に興味をもって、学生の時に研究をしていました。高校生のときに白川英樹先生のノーベル賞に触れたことも大きかったのではないでしょうか。そのうちに、もっと有機物らしさや高分子らしさといった特徴を十分に生かせる方法ないかと考えるようになり、いまの研究テーマに行き着きました。
このアプローチは、これまであまり試みられていませんでしたが、柔軟であることや、生体と親和性があることなど、高分子の特徴に着目することで、導電性高分子をいかせる可能性が広がります。また、従来の有機材料や高分子材料は電気を通さないものが多かったのですが、電気を通すという特徴をいかすことで、新しい材料の開発につなげられると考えています。
常識が変わることを期待します。通常は、トランジスタのような精密機器は、水や酸素が入らないように保護をします。そのため生体に対して使う時は、別の機器として製作したものをつけられるようにすることが、これまでの設計の方法でした。しかし、生体内で導電性高分子を使えるということは、水の中、酸素がある中で、何も保護をしないでこのような機器を動作させることが可能になるということです。
このように電動素子に対する常識が変わることで、研究の可能性も、医療分野への応用も広がっていくだろうと考えます。
つかえる材料として、導電性高分子はあります。応用に向けてさらに研究を進めていくためには、生き物でテストするための環境が必要です。そのため、生体内で研究ができるバイオ、医療分野の方々と連携できたら嬉しく思います。