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SEED
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文化財の劣化メカニズムを解明し、保存・公開の両立が可能な環境調整方法を提案する。

RESEARCHER
二条城を対象に、障壁画の適切な保存・公開方法について研究を行っている。襖絵などの障壁画は建物の一部であり、建物の構成要素として建物とともに文化財の指定がなされる場合が多いため、現地での保存・公開方法を考える必要がある。 二条城では、多数の障壁画が展示されている。温度湿度による劣化、光による褪色、虫による被害など、多くの保存についての問題が現場では経験されてきた。温度・湿度の変動の大きい建造物内でいかに劣化を抑制するかが課題である。

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人すなわち観光客はある種の熱源であり、発湿源でもある。障壁画の保存を考えた際にどのような環境が適切であるかを温度・湿度と劣化現象の観点から解明し、その環境を実際の建物運用においてどのように達成するのかを明らかにすることを目指している。また、障壁画の模写画を公開することも多いため、本研究は、オリジナルの文化財の劣化を食い止めるだけではなく、模写画の劣化を防ぐことにも貢献が期待される。

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実寸大の襖を用いて襖の周囲の温度・湿度環境が、襖の反りにどのような影響を与えるのかについて実験を行った。襖の表と裏で温度・湿度が異なると反ることは経験では知られていたが、それぞれの面で高湿側、低湿側を作り実験したところ、実際に高湿側に反ることを明らかにした。

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また、襖が結露するほどの高湿環境に暴露した後、急激に乾燥させたところ本紙の四隅にたわみが観察された。本紙のたわみは単なる紙の膨張・収縮だけでなく、紙を支えている襖の構造部材の変形が影響をしていることがわかり、紙の亀裂防止には襖の構造部材の変形挙動と紙の膨張・収縮挙動の両方を考慮した検討が必要であるという知見を得た。

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障壁画の色について、12色の顔料を塗布した模擬障壁画を作成し二条城内に設置することで、実環境下における顔料の変褪色の仕方を検証した。その結果、全ての色が同じように変褪色をする訳ではなく、顔料によっては全く変褪色しないものも存在するという結果を得た。変褪色が顕著な顔料は、水銀朱、群青であること、丹のような顔料は季節によって色味が変わる温度依存性のある顔料であることがわかった。

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城内の一部に空調設備が導入された場合を仮定し、空調のある部屋とない部屋の境にある壁貼り付けの障壁画について、亀裂リスクの評価を行った。検討のために有限差分法を用いた数値シミュレーションを行い、壁内部の温度と湿度がどのように伝搬するのかを検証した。 解析の結果、障壁画の表面側の空間の温湿度は均一だとしても、裏面側の空間の温湿度が不均一な場合、本紙の温度・湿度には分布が生じうること、結果として亀裂が生じうる可能性があることが明らかになった。

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温度・湿度の測定器。 二条城の建物内の環境を把握するために、本丸御殿内の31箇所に温度・湿度の測定器を設置した。結果として、天井裏や床下といった空間はもちろんのこと、十分に換気がなされている居室であっても温度や湿度は均一ではないことが明らかになった。

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このような二条城の温湿度環境がどのように形成されているのか、数値シミュレーションによる解明を進めている。例えば、ある部屋では湿度が高くカビが生えやすくなるのはなぜか、襖をどの程度開けておけば居室内の空気は澱まず十分な換気量が確保できるのかなど、シミュレーションで確かめることができる。この技術を応用することで、来場者を入れての運用時に、どのように環境を調整するか選択肢を明確にすることを目指している。画像は解析概要。

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塩類風化および多孔質中の塩移動メカニズムの解明とその抑制策の研究を進めている。 建造物・屋外文化財にとって塩の存在は身近であり、例えば崖に直接彫刻された石仏(磨崖仏)などの文化財は、水分や塩によって劣化することが知られている。石材は多孔質な材料であり、雨水の浸透や地下水の汲み上げが容易に生じるため、石材表面で水分が蒸発することで表面に塩が蓄積し文化財を破壊する。このような現象(塩類風化)は古くから知られているが、実際の特定の文化財でなぜ起きるのかについては不明な点が多かった。

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大分元町石仏を対象に、塩による劣化のメカニズムについて現場実測や実験、数値シミュレーションを行った。石材中の水分の移動速度はどのくらいであるのか、どのような環境であれば塩による劣化が生じうるのかなどを検証し、塩による劣化を抑制できる環境を明らかにすることを目指している。

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蛍光X線を用いた石材表面に蓄積する塩分量の測定

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解析結果と考察。文化財における塩類風化を引き起こす主要な塩である硫酸ナトリウム(Na2SO4)は、乾燥した時ではなく湿潤した時に材料を破壊する。水を吸わせた量によって、材料を破壊する力が異なるため、塩溶液を吸った材料の破壊実験を行った。 また、材料の中の塩分量の予測を可能にするため、塩溶液を材料に吸わせて、表面に蓄積する塩素の量を蛍光X線によって測定した。さらに数値解析によって内部の状態を検証し、「塩溶液を吸い、蒸発し、塩が蓄積する」過程を再現することのできるモデルを作ることに成功した。

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二条城を対象とした襖の変形実験に用いた紙。複数の層の紙で構成されており、絵が描かれる本紙には雁皮紙が、中間の層である蓑掛けには楮紙が、最奥の層である胴貼には間似合紙が用いられている。 上:未使用の襖紙。本紙、蓑掛け、胴貼という複数の紙から構成される。 下:数十年使用した襖紙の一部。

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どんなタネ?

文化遺産を維持・保存・公開する方法について研究しています。古墳やお城といった文化遺産には、石や木材など様々な素材の文化財がありますが、その多くは現地で保存し公開することが必要です。そこで、文化財を取りまく環境とその劣化メカニズムの関係を明らかにして、どのような環境であれば劣化を防げるのか、どのような方法でそのような環境を達成するのかを考え、現場の運用に貢献することを目指しています。

研究では、京都市の二条城を対象に、模擬障壁画や実寸大の襖をつくり色の褪色や本紙の亀裂のリスクについて検証しました。同時に、城内の温度・湿度環境を計測し、二条城内の環境そのものを再現するための数値シミュレーションの開発を進めています。また、大分県にある大分元町石仏を対象に、塩による劣化(塩類風化)のメカニズムの解明とその対策方法について実験ならびに数値シミュレーションを行っています。

なぜ研究を始めた?

私は茶道に携わる家に生まれ、日常的に文化財に囲まれる環境で育ったため、逆に文化財への興味があまりありませんでした。その中で、研究室でテーマを選ぶ際に教授が面白く語る姿をみて、「今の私には理解できないが、自分より人生経験の長い先生がこれだけ楽しそうに語るのだから、きっと文化財研究には私の知らない面白さが詰まっているのだろう」と思ったのがきっかけです。

建築の環境工学分野は、建物の中の環境をコントロールすることが初めにあり、次にくるのが、建物の中にいる人の健康や快適性です。しかし、建物の中にある“人以外のモノ”に対する快適性、つまり「文化財の快適性」にはあまり着眼してきませんでした。文化財が劣化することは現場の経験でわかっていましたが、そのメカニズムについては十分な知見がないのが現状です。

文化財を対象に研究することは、建築環境工学の研究対象領域を、さらに広げ得るのではないかと期待しています。

なにを変える?

これまでは文化財を現地で保存・公開する際の手がかりがあまりありませんでした。例えば、窓からの採光は文化財の劣化要因になりますが、どの程度の採光量であれば問題にならないのか、建物の気密性を上げすぎると揮発性有機物質による劣化の温床になりますが、下げすぎると湿度が不安定になるため、どの程度の気密性を目指すのか、また観光客も温度と湿度の源になりますが、どのくらい人数をいれてよいのか、といった具合にです。

また、通常文化財は、空調設備によって温度と湿度を一定にすることで保存されてきました。しかし、収蔵庫には多くの電気代かかり、また、現状の厳しい湿度管理・温度管理が、果たしてそこまでの必要があるかも明確ではありません。もし、収蔵庫の外側で温度や湿度の変動を許した上で、どのくらいの設計条件にすれば、省エネルギーを担保しながら文化財を保存できるのかが分かれば、文化財の保存の仕方を変えていくこともできるでしょう。

なにが必要?

文化財をその価値を維持したまま後世に継承することに対して、人々の理解を深めることが必要だと考えています。文化財の劣化抑制を最優先するのであれば、安定した収蔵庫のような保存環境で管理するのが最善です。他方、公開環境、すなわち文化財を人々が目にすることのできるような場所では環境の変動があるため、文化財は常に劣化の危険にさらされています。もちろん、環境の変動=劣化ではないため、保存環境のモニタリングを行い環境の適切性を把握することや、文化財が劣化していないかを確認することが不可欠ですが、率直に言ってしまうと、これらの作業には、美観上不適切と言われることも多いモニタリング機器の設置や、保守・管理のためのコストが必要となるわけです。しかし、これらの作業は文化財の適切な維持・継承には不可能ですので、こうしたことへの理解が広まると嬉しく思います。

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