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複雑な高分子の流動をシミュレーション予測できるようにしたい!

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研究の概要(ページ下部に解説動画があります)

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特異な挙動を示す高分子流体。高分子流体は細い管から流出した直後に一度ふくらみを見せるなど独特な挙動を示す(例えばシャンプーがノズルから出た直後など)。流体の流れを解く方程式は応力(σ)を必要とするが、高分子のようなソフトマターの応力を求める式(構成方程式)は確立していない。

特異な挙動を示す高分子流体。高分子流体は細い管から流出した直後に一度ふくらみを見せるなど独特な挙動を示す(例えばシャンプーがノズルから出た直後など)。流体の流れを解く方程式は応力(σ)を必要とするが、高分子のようなソフトマターの応力を求める式(構成方程式)は確立していない。

高分子流体のシミュレーション手法。ミクロの現象(各高分子鎖の挙動)とマクロの現象(全体の流動)を同時に扱うマルチスケールシミュレーション(MSS)法を用いている。しかしミクロな情報を全て反映すると計算量が膨大となる。そこでミクロの情報を機械学習することで、効率的に情報を抽出。具体的には、ミクロな情報から、応力の時間変化率(σ ̇)を応力(σ)とひずみ速度(κ)の関数として(しかし関数形を与えること無しに)求めることで、ミクロとマクロをつなぐことに挑んでいる。

高分子流体のシミュレーション手法。ミクロの現象(各高分子鎖の挙動)とマクロの現象(全体の流動)を同時に扱うマルチスケールシミュレーション(MSS)法を用いている。しかしミクロな情報を全て反映すると計算量が膨大となる。そこでミクロの情報を機械学習することで、効率的に情報を抽出。具体的には、ミクロな情報から、応力の時間変化率(σ ̇)を応力(σ)とひずみ速度(κ)の関数として(しかし関数形を与えること無しに)求めることで、ミクロとマクロをつなぐことに挑んでいる。

粘度だけで流体を記述できる粘性流体の場合は、すでにシミュレーションが可能となっている。しかし高分子流体の場合は粘性のみならず弾性を考慮する必要がある。そこで、流動によって高分子が変形(伸縮)したりや絡み合いの数が変化すると、それに応じて時間的に応力が変化する「弾性体的な記憶の効果」をシミュレーションに反映しようと試みている。

粘度だけで流体を記述できる粘性流体の場合は、すでにシミュレーションが可能となっている。しかし高分子流体の場合は粘性のみならず弾性を考慮する必要がある。そこで、流動によって高分子が変形(伸縮)したりや絡み合いの数が変化すると、それに応じて時間的に応力が変化する「弾性体的な記憶の効果」をシミュレーションに反映しようと試みている。

微視的な高分子モデル。応力を計算するには、高分子の化学的な組成まで考慮する必要はなく、高分子をひも状の分子として単純化することができる。このモデルでは、分子同士の絡み合い、配向性、全体の動き、分子量の分布など考慮し、応力の時間変化率に関係づけている。

微視的な高分子モデル。応力を計算するには、高分子の化学的な組成まで考慮する必要はなく、高分子をひも状の分子として単純化することができる。このモデルでは、分子同士の絡み合い、配向性、全体の動き、分子量の分布など考慮し、応力の時間変化率に関係づけている。

ガウス過程回帰の適用。数学的な手法(ガウス過程回帰)を用いることで、応力の時間変化率を応力とひずみ速度の関数として学習する。応力の時間変化率の学習で用いている一つのデータ点は、約1万個の分子の挙動を反映している。結果として求まった応力を介して,ミクロな現象とマクロの現象を直接的につなぐことができる。

ガウス過程回帰の適用。数学的な手法(ガウス過程回帰)を用いることで、応力の時間変化率を応力とひずみ速度の関数として学習する。応力の時間変化率の学習で用いている一つのデータ点は、約1万個の分子の挙動を反映している。結果として求まった応力を介して,ミクロな現象とマクロの現象を直接的につなぐことができる。

研究の概要(ページ下部に解説動画があります)

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特異な挙動を示す高分子流体。高分子流体は細い管から流出した直後に一度ふくらみを見せるなど独特な挙動を示す(例えばシャンプーがノズルから出た直後など)。流体の流れを解く方程式は応力(σ)を必要とするが、高分子のようなソフトマターの応力を求める式(構成方程式)は確立していない。

特異な挙動を示す高分子流体。高分子流体は細い管から流出した直後に一度ふくらみを見せるなど独特な挙動を示す(例えばシャンプーがノズルから出た直後など)。流体の流れを解く方程式は応力(σ)を必要とするが、高分子のようなソフトマターの応力を求める式(構成方程式)は確立していない。

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どんなタネ?

高分子流体の流動予測をしています。流体の方程式を解くには、応力の値を必要とします。しかし,高分子の応力を求める式(構成方程式)は確立していません。応力の値は高分子の絡み合いや、分子の向き(配向)、分子が受けた変形履歴などにより決まり、このようなミクロで起きている変化は,応力をとおしてマクロスケールの流動に影響します。そこで,ミクロとマクロを同時に扱うマルチスケールシミュレーション(MSS)法により流動予測に取り組んでいます。しかしながら,MSS法は,膨大な計算量を必要とするため,現実の複雑な問題への応用が進んできませんでした。そこで,MSS法の計算に必要なミクロの情報を,機械学習によって少ない計算量で求めることで,この問題の解決に取り組んでいます。

なぜ研究を始めた?

元々は計算物理学に重点を置き、物理化学を専攻してきました。バイオエンジニアリングへの関心から、生体内での粒子のふるまいに興味を持つようになり、高分子、液晶、コロイド、生体分子などのソフトマターを対象とした理論モデリングと出合いました。そして従来の計算物理学の手法を高速化し、補完するものとしての機械学習に着目しました。現在、取り組んでいる高分子の流動予測については産業応用につなげることを見据えています。例えばスーパーコンピューターで3日かかる計算を通常のパソコンでも数時間で行えるようにしていきたいと考えています。

なにを変える?

液状の高分子は、身近にはシャンプーやマヨネーズ、液体のりなど、さまざまな工業製品として存在しています。従来の化学工学では、経験的な方法論が一般に用いられてきました。MSS法で高分子の流動予測が可能になれば、特異な挙動を示す流体の本質的な理解につながります。そして高分子の成形・加工のプロセスに応用することで、より高機能な高分子製品の創出が期待できます。一方、複雑な流体として捉えられる現象は他にもあり、例えば人流(人の移動)もその一つです。さまざまな現象にMSS法を応用展開していくことも考えています。

なにが必要?

高分子流体について予測精度を評価するため、今後は実験系の人たちとの協力が必要になってくると考えています。一方で、私は化学や生物に限らず、データ駆動型科学の全般について関心があります。特に、相互作用する複数粒子系の問題に取り組むには、現象の物理的な側面を重視したデータサイエンス、機械学習との融合が有効だと考えています。このアプローチをさらに発展させるため、コンピュータサイエンスや情報理論、機械学習の専門家ともコラボレーションしていきたいです。

VIDEO MATERIAL
INTERVIEW
桂産直便
複雑な高分子の流動をシミュレーション予測できるようにしたい!

2022.03.01

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