従来型のリチウム電池の改善と、水系電解液を用いた次世代二次電池の開発を目指して、特にアニオンに着目をして研究をしています。
フッ化グラファイトは一次電池の正極材料として広く利用されていますが、このフッ化度を制御して、使い捨てではなく再充電できるようにしました。さらに、リチウムイオン電池の正極材料について、充電を繰り返した際の容量が低減する課題に対して、表面をフッ素化して保護層を作るなど性能を向上させることに成功。また、リチウムに代わり、フッ化物イオンが電池内で動くフッ化物シャトル電池は、高容量な蓄電池として注目されています。F<sup>-</sup>を伝導する新しい電解液を探すとともに、は遺伝的アルゴリズムの手法を用いて固体電解質材料の探索に取り組んでいます。
エネルギー問題は、人類が避けては通れない課題です。これまで、大学と企業の研究との違いを認識し、また外国籍の方、女性、文系の方と様々な方々と議論をしながら研究をする経験を経て、エネルギー問題に対する関心の高さと多様なアプローチの必要性を感じました。
リチウムイオン電池が実用化されてしばらく経ちますが、研究という観点では手詰まり感があるといえます。また、電池研究においては、“作りやすい”カチオンに対しては最適化が進んできたものの、作り方が難しいアニオンに対する取り組みは多くありません。そこで、アニオンに注目をすることで、これまでとは異なる研究が拓けると考えました。
カチオンに着目してきた電気化学の分野は向上してきました。実用化でも大きな成果が出ています。しかしアニオンについては未解明といえ、この状況では全体を理解したことにはならないと考えています。いざアニオンに取り組むと、4分の1構成を変えただけでも、大きく効率が変わることがわかりました。
こうした一つひとつの取り組みを通じて、全体を理解し、その上で新しい材料設計につなげていくことを目指しています。
私は実験屋なので、日々データをとっています。しかし、そのデータを閉じた範囲の中でしか評価してできていないのが現状といえます。
情報科学の分野の専門家の方々から知見を得て、AIを用いて、データを理解して蓄積して学習を進め、例えば「こういうところが探索の領域として興味深い」といったサジェスチョン機能をもとに、有望な材料であったら合成をするなど、“データ駆動の実験”が可能になれば、さらに研究は進展するでしょう。