レーダをつかって非接触で人体をセンシングする技術を開発しています。レーダで皮膚の浮き沈みを測り、人の呼吸や心拍の質を知り、そこから推定される心理状態までを観察することができます。身体の様々な部位で測定可能で、複数人を同時測定できることから、空港でのセキュリティ対策や乳幼児の突然死症候群を回避するための見守りなど、社会の様々な場面での活躍を想定して研究を進めています。
2002年の米国でのUWB標準化を契機に室内で使える超広帯域レーダが登場し、数センチメートルという高い分解能で近距離の対象物を測定できるようになりました。これなら人が測定できる、そうすれば社会が圧倒的に変わると考えました。測定対象が人体なのですから、人体に関する医学・生理学の膨大な知識を活かせます。測定・信号処理・人体。この3つを統合した新分野の確立を目指して研究を進めています。
健康意識の高いウェアラブルデバイスのユーザーにとって、まったく何も身に付けないバイタルモニタの経験は衝撃的で、かつてインターネットがワイヤレスで初めて使えるようになった時と同じような感動があるでしょう。また、本人が無意識のうちに呼吸、心拍、心理状態が測れる技術は今までにありません。これまでは乳幼児の見守りなどを目指して研究を進めてきましたが、さらに新しい使い方とアプリケーションが期待されます。
技術面だけではなく、アプリケーション面でユーザーの理解を得ていくことが必要です。非接触で無意識のうちに測定できるため、倫理的な面に気を配った魅力的なアイディアが必要です。平和的で面白い、アプリとデザインのアイディアがあれば、世界をあっといわせる新展開が待っています。フットワークの軽いベンチャーの挑戦や、前人未到のヘルスケアサービスを目指す企業にぴったりだと思います。