桂図書館横広場
・桂新広場プロジェクトのこれまで
2019年度から始まった桂新広場プロジェクト*1では、平田研究室に有志の学生を加えたグループで、桂図書館に隣接する空き地をキャンパス内の学生の意見を取り込みながら設計を行い、学生が集い、自由に過ごせるような広場へと変貌させました。この広場が2020年9月1日にオープンすると、桂キャンパスの各研究室内に閉じこもっていた学生や教職員の息抜きの場や、青空ゼミのような研究活動の場として広場が使われ、放課後や休日には地域住民や子どもたちの姿も見られるようになりました。期せずして重なったコロナ禍において、人々が安心して集える場所として機能するとともに、これからの屋外空間の新しい可能性を示唆するものとなりました。
・「桂の庭」との出会い
2021年に入り、広場の更なる活用方法を検討していたところ、広場の隣の桂図書館内の展示を通じて、普段は見えにくい研究室の活動や研究内容を「桂のタネ」と名付け、多くの人に知ってもらえるように紹介する「桂の庭~京都大学桂図書館 研究シーズ・カタログ」という新しい取り組みが行われているということを知りました。私たちは、図書館のすぐ隣にある広場の立地を活かして「桂の庭」の展示を拡張できるようにすれば、より多くの人の目に留まり、研究者間の出会いや、官民連帯のきっかけづくりの手伝いができるのではないかと考えました。
・「桂のタナ」実現に向けて
「屋外で展示ができる棚のような什器」を実際に考えてみるとそこには多くの問題が伴いました。雨や風といった屋外の環境に耐える仕様にしなければならないことに加え、バスケットゴールや健康器具の利用を基本とする桂広場で安全に設置するためには、すぐに倒れないような重りを必要とします。また、展示を行わない際には邪魔にならないように移動したり、片付けられる機構を考えなければなりません。そこで私たちは、日常時には腰掛けることができる円盤を広場に設置し、イベント時には折り畳み可能なグリット型のフレームをそこに差し込むことで展示空間が立ち現れるような什器を考えました。例えば、円盤を支える荷重は出し入れが可能な土嚢によるものだったり、フレームの折り畳みを可能とする回転機構のディテールなど、こうした展示什器を実現するに辺り、ひとつひとつの仕様や機構をデザインをしました。構造設計では建築学専攻で建築物の構造計算・解析の研究を行っている大崎・張研究室と、施工にあたっては、家具制作を行うpivotoおよび上西製作所と協働しています。
・今後の展望
この展示什器「桂のタナ」は、将来的には什器の台数を増やし、桂広場だけでなく桂キャンパス内の至る所で定期的に展示することを計画しています。この什器の設計をきっかけとして、キャンパス全体で京大・工学の研究シリーズの発信の場が生まれることを期待しています。
注*1
http://www.hirata-lab.archi.kyoto-u.ac.jp/桂新広場プロジェクト/