風工学の分野において、構造物の耐風設計を目的に、風荷重の評価、風による振動現象を中心に研究をしています。最近では構造物の耐雪設計、特に、着雪に起因する被害の低減に向けた研究を行っています。あまり分かっていなかった着雪の影響について、実規模送電線での観測や実験・解析を行い、新しい設計標準の提案につなげました。また、送電線を対象に、観測と実寸大の模型による風洞実験を行い、ギャロッピングという雪と風によって大きく振動する現象について評価を行い、電線が近づきすぎないようする対策や必要な電線間隔を設計に反映する方法を検討しました。
耐風設計では橋梁や送電設備を主な研究対象としてきましたが、着雪の問題については、橋梁、送電設備、鉄道、道路(信号・看板)、通信設備など対象となる構造物を絞らずに、普遍的な評価モデルをつくることを目指しています。
学部で研究室を選ぶときに、風のテーマが面白そうだと思い、橋梁の風の振動を対象にした研究分野に進みました。趣味のウィンドサーフィンを通じて、風という自然現象に触れていたことも大きいと思います。修士課程を卒業後、電力中央研究所で働き、橋梁を対象に研究してきた風による振動の影響の経験を、送電設備の振動問題に活かしたいと考えました。送電設備の風による振動問題の一つに、着雪が起因して風があたる断面形状が変化して発生するギャロッピングという現象に興味を持ち、雪を対象にした研究に取り組むようになりました。着雪の分野はまだ知見が少なく、観測などを通じて現象を見るうちに、その難しさとともに、解明に向けた研究に面白さを感じるようになりました。
自然災害はコントロールできません。インフラ設備の背後に、自然災害の低減のための多くの苦労があることを実感し、やりがいを感じています。
日本は世界的にみても豪雪地帯です。しかも、周辺が海に囲まれている影響もあって、構造物に付着し易い湿った雪が降りやすいです。また、雪が多く降る場所に人が多く住んでいるため、着雪やその脱落による様々な問題があります。雪の研究には様々なアプローチがありますが、工学につなげた研究はまだ先例が少なく、積雪を対象にした研究はあっても、構造物への着雪の研究はあまりありません。雪は風に乗って飛んでくるため、風工学の観点から雪の研究をすることも必要があると考えています。
送電設備、鉄道、道路、通信設備などのインフラ設備は、物量が多いものでは少しの改良が社会的には大きな影響になります。自然災害の影響を低減し、インフラを安全に維持するために努力している人たちがいます。そうした現場に貢献でればと思い研究を進めています。
これまで、電力会社と連携し、様々な送電設備の実際の現場を見てきましたが、より広い分野への展開を考えると、鉄道や橋梁など、さらに様々な分野で実例を見ていくことが必要です。
雪による影響についてはまだ知見が少なく、例えば看板についた雪は、どのような形状の看板だとどのように落ちるのかなど、様々なケースを見ていく必要があります。一つひとつの問題の件数は多くなくても、それぞれが抱えている問題を集めれば解決が見えてくるかもしれません。色々な分野で、被害の情報やモニタリングデータなどを集めることができれば、いま積み上げている現象のデータとつなげて、さらに研究が進むと考えています。