新しい部品の研究により、より高精度・高速の工作機械を実現することを目指しています。本研究では、金属加工を行う工作機械の主軸に使う回転シャフトを開発しました。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)と鋼をくみあわせることで、熱による膨張を大幅に抑制することを可能にしました。また、CFRPは炭素繊維の方向によって特性が大きく異なるため、シミュレーションできるようにしました。
生産にかかるエネルギーをなるべく減らしたいと思っています。工作機械では、加工精度をあげるため、主軸を1~2時間も暖機運転して,熱による材料の膨張を安定させるための準備をします。本研究により、暖機運転に必要なエネルギーを減らすことができます。
持続可能なものづくりに貢献します。金属加工を行う工作機械は世界中で使われており、この主軸が導入されれば、暖機運転にかかるエネルギーを圧倒的に減らせます。試験では、例えば従来の1/3の時間の暖気運転で目標とする精度が得られるため、飛躍的に生産性を向上できます。現在はCFRPの素材のコストの高さが課題ですが、これから先、エネルギー削減のための需要が増えた時に注目される技術となります。
まず、CFRPの普及が進んでコストが下がれば導入が促進されます。また、本主軸を実際の工場で使うには、長期的な信頼性の評価も必要です。研究では2年間壊れずに運用できていますが、工作機械は20年、30年と使います。「1年で10年分の負荷をかける」といった加速試験は考案されておらず、またユーザが納得しないと使ってもらえないため、実際に本主軸を使いたいという企業の協力を得て、実地のデータを収集することが必要です。