新しい発光材料の開発を研究しています。中でも、身の回りの生活に欠かせない発光性有機材料について、現状、有機分子の骨格は、炭素・水素・窒素などの有機分子に少量のヘテロ元素や金属が含まれていますが、さらに多様な元素の性質を活かすことができないかと考えています。
これまで特殊な元素の例として、13族元素であるホウ素を利用すると強い発光性や生体適合性、刺激応答性などの多彩な機能が得られていました。しかしホウ素以外の例はほとんど知られていなかったため、元素を入れ替えた新しい材料の開発を進めています。例えばホウ素と同じ族のアルミニウムやガリウムなどを利用しています。また、高分子化によって新しい機能を付与することにも取り組んでいます。例えば、製膜性など、高分子は低分子では実現しづらい性質を簡単に達成できます。こうした研究から、発光の仕方や発光色の制御、色変化のメカニズムの解明などを進めています。
私たちの身の回りには、光るものがたくさん存在しています。研究を始めたそもそものきっかけは、光る色の違いはどのように起きるのかと興味をもち、それを知りたいと思ったことです。
実際に自分の作った化合物が光っているのを見るととてもワクワクします。色々な刺激にどのように応答するだろう?どんな風に変化するだろう?と、研究を進めることが楽しいという気持ちによって、モチベーションを保つことができています。
身の回りで使われている発光材料にはまだ改良の余地があります。例えば、有機EL使われる高価な金属元素の量を減らしたり、バイオイメージングでは生体の奥深くを観察するために長波長領域で発光する材料が必要であったりします。
ここで、発光材料に使われていない元素がまだたくさんあります。発光のメカニズムを解明し、色々な元素を適材適所で使えれば、発光材料の未来を持続的に発展させられると考えています。また、例えば、電気を流すと光るのが有機ELですが、逆に光を吸うと電気が流れるのが太陽電池であり、実際に似ている材料が使われています。よく光る分子はよく電気を流したり、よくエネルギーを蓄えたりする傾向にあるため、太陽電池や光触媒など、有機材料が使われている他の光に関わる分野にも応用ができるかもしれません。
近年、機械学習など情報分野の技術によって、化合物の性質が実際につくらなくても分かったり、合成も自動化されたりするなどの発展があります。しかし、まだ特定の分野にしか応用できていないと言えます。
私たちが進めているような、これまで使われていなかった元素を使い、その性質を明らかにしていく研究でも、機械学習や自動化の分野の方々と協力をして、学術的な信頼性を保ったまま効率化を進めることができれば嬉しく思います。新しい材料探索の効率化を進めれば、学術的にも産業的にも新しい進歩が得られるでしょう。