おもに房総半島の黒滝不整合を含む地層をフィールドに、日本列島の生成の解明に取り組んでいます。とくに、この房総半島に分布する泥の「軟岩」に着目しました。現地から持ち帰った軟岩に対して、機器を用いて圧密試験を行い、岩そのものの力学特性を調べることで、地質の成り立ちを推定します。現地を歩き回る地質調査と工学的手法を組み合わせた、新しい研究の方法論です。
房総半島では、日本列島の生成に関わる比較的若い年代の調査が可能です。同年代の地質はまだ海の底にあるため掘削船などで調査するほかありません。その地質の形成が知りたくフィールドを歩きまわっているうちに、そのような時間をかけて堆積した特性も、石に組み込まれているはずだと思いつきました。岩の力学特性に着目し、岩石力学の研究室で3年間試験手法を学びました。どのように軟岩が形成されるかはわかっていません。圧密試験だけではなく引張強度や圧縮強度など他の力学試験も進め、軟岩分野を系統だって考えたいと思います。
圧密試験は、硬すぎる岩だとできないため、現在は軟岩のみを対象にしています。しかし、これらの試験を硬い岩、つまりさらに古い岩でもできるようになれば、世界中の様々なフィールドに応用が可能です。地質学はもともと、現地調査をして地質図を描くという研究手法です。そこに工学的、定量的な手法を入れていけばもっと面白くなります。地質で得た解釈を岩の性質解明に使えます。そして日本列島の成り立ちに、定量的な考察もいれていけるのです。
軟岩から硬い岩にも対象を広げるためには、チームとして研究を進められたら嬉しいです。地質学のみではなく、岩や土壌を研究対象にしている方々とともに研究を進めることができれば、軟岩チームと硬い岩チームで、「軟岩とは何か」を考えたり、「硬い岩」への適用を進めたりすることが可能です。