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マグネシウムの役割を調べ、生命から疾患までを解明したい!

RESEARCHER
マグネシウムは、細胞内ではカリウムについて二番目に多い金属元素であり、その大部分はATPやDNA、タンパク質に結合した状態で存在している。また多数の酵素反応にも必須であると知られており、細胞内含有量も厳密に制御されているが、その機構や重要性については十分な研究が進んでいなかった。 我々の研究では、主に培養細胞を使って、マグネシウムの動きをライブイメージングで可視化したり、各種元素の定量や、立体構造解析などの各種検討により、マグネシウムの量調節に関わる分子を同定した。

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これまで、マグネシウムを細胞内に吸収する分子はわかっていたが、細胞から排出するために働く分子は長らく不明であった。その分子がCNNMであると同定した。CNNMは細胞膜に埋め込まれ、特に腸や腎臓では生体内に面した側の膜(基側部)よりマグネシウムを積極的に排出することで、体内への吸収・再吸収を助ける。

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PRLはがん組織で特異的に発現し、がん悪性化を積極的に押し進めることが知られていたが、その具体的な仕組みがわかっていなかった。その機構を調べていたところ、PRLはCNNMに直接結合して、CNNMによるマグネシウム排出を阻害し細胞内マグネシウム量を増やすことで、がんの悪性化を進めることを発見した。研究では、CNNMをノックアウトすると腫瘍が悪化して筋層に浸潤する、悪性のがん細胞になることを確かめた。

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私たちの研究によって、がん細胞が酸性環境に適応する背景には細胞内マグネシウムの量調節異常が関わっている機構があることを発見した。 細胞内でマグネシウムが増えると酸性の細胞内小器官(オルガネラ)であるリソソーム上にあるチャネルTRPMLを介して本来細胞内にあるリソソームが細胞膜に移動してプロトンを吐き出す。 つまりPRLがCNNMに結合しマグネシウムを細胞の中でため込むようになると積極的なプロトン排出を介して酸性化した環境下でも細胞内が過度に酸性化しない状況ができ、がん細胞は増殖し続けられると考えられる。

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がん細胞は代謝が変容しており、その副産物として大量の酸性物質が作られ周囲の環境を酸性化させる。このような酸性環境は通常細胞にとって害悪であるものの、なぜがん細胞がこのような過酷な環境で増殖し続けることができるのか、仕組みが明らかになっていなかった。 私たちの研究によって、その背景には、細胞内マグネシウムの量調節異常が関わっているチャネルTRPMLを介した機構があることを発見した。 実際、遺伝子工学の技術を用いてがん細胞のTRPMLを欠損させると、マウス移植時の腫瘍形成が全く起きなくなることがわかっている。

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どんなタネ?

生命と疾患におけるマグネシウムの量調節の重要性を解明する研究をしています。マグネシウムは、その仕組みや重要性(多すぎ、少なすぎがなぜよくないのか)については十分にわかっていませんでした。私たちの研究から、長らく不明であった、細胞からマグネシウムを排出し、体内への吸収・再吸収の必須分子CNNMを同定することに成功しました。これにより、CNNMの機能調節を介して可能となったマグネシウム量の人為的操作を介して、マグネシウム量調節の生物学的意義の解明を進めています。これまでがん細胞の酸性環境適応機構に重要であることなどを明らかにしており、さらに他の疾病や老化などにも研究対象を拡張しながら、生命・疾患におけるマグネシウム量調節の重要性を追究しています。

なぜ研究を始めた?

もともとはがんを対象に研究を進めており、ヒト悪性がん組織で特異的に発現し、がん悪性化を進めるPRLという分子に結合する分子を探していたところ、CNNMを発見しました。その機能解析より、幸運にもCNNMがマグネシウムの量調節機構に関わることを見つけることができたので、マグネシウム量の変化がもたらす影響や、その背後にある仕組みを詳細に解明したいと考えました。

マグネシウムは、大事な元素であることが広く知られているものの、他の生命元素と比べ解析があまり進んでいません。正確に測る技術すら未だに確立されていないという状況ですが、測定方法の開発も含めた、さまざまな共同研究によって研究を進めてきました。始まりは偶然ですが、未知の部分を開拓しながら、未整備な状況に貢献したいと研究を続けています。

なにを変える?

基礎科学としての研究を引き続き進めていきたいですし、その先の応用も見据えています。例えばがんについては、マグネシウム量の調節異常ががん細胞の酸性環境適応と関わることを見つけています。腫瘍組織の中は通常と大きく異なっており、例えば低酸素状態についてはがん細胞の適応機構が詳しく解析されており、それを阻害する薬も開発が進んでいます。いずれは酸性環境についても機構が解明されれば、さまざまな研究者が、それに対する薬の開発を目指して研究をはじめる動機づけになる可能性があります。

また世の中では「カルシウムをとりましょう」とよく言われます。一方、マグネシウムの不足が高血圧など色々な病気を誘発することが指摘されているにも関わらず、「マグネシウムをとりましょう」とはあまり言われません。その理由としてマグネシウム不足から疾患へとつながる仕組みがあまりわかっていないことが挙げられ、自分たちの研究からそれを明らかにすることで、マグネシウムの摂取の重要性が認知される世の中になると嬉しく思います。

なにが必要?

マグネシウムを「見る」「操作する」方法をさらに改善していきたいです。例えば、細胞や組織のマグネシウム量を自在に変えられるツールや、細胞・生体内のマグネシウム量を高解像度にかつ定量的に見られるツールなど、一緒にツールを開発していただける方の協力を得られたら嬉しく思います。

また疾患との関わりを追究する研究の特性上、実験動物(特にネズミ)を用いる解析が多くなります。皆さんの理解を得ながら、より大規模に実験動物を扱うことが可能となれば嬉しいなと思っております。

VIDEO MATERIAL
ライブイメージングによって、培養細胞におけるマグネシウムの量の変化を可視化した映像。 右の2つの細胞(アスタリスク)では、マグネシウムを細胞から排出するために働く分子「CNNM」が発現している。これらの細胞では、外液のマグネシウム量などを操作することによって細胞内マグネシウムの量を人為的に変化させることが見てとれる。
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