「フォトニック結晶」「フォトニックナノ構造」をテーマに、光・量子を自由自在に操ることを目指して研究を進めています。フォトニック結晶を用いた共振器により、光の波長レベルの小さな領域に強い光を閉じ込めることができます。研究では、世界最高の光閉じ込め能力をもつ共振器を開発することに成功しました。さらに、光がこの系の中に保持している間に系の状態を変えることにより、これまでにない動的な光の制御の方法を提案。これにより、電子回路を光回路に組み込んだ「電子光融合回路」を作製し、断熱的な制御を実現しました。また、この方法を用いれば、これまで電子に変換して蓄えていた情報を光のまま蓄える「光バッファ」や、シリコンのみでできた光を一方向にのみ通す「光アイソレーター」も実現可能になります。なお、こうした設計を行うために、機械学習をもちいた設計手法も開発しています。
これらの基礎技術によって、低エネルギー消費・かつ高精度な光・量子技術への貢献を目指しています。
学部に入学する前から、光を制御したいという思いがありました。そこで、研究室に入り、半導体の中の電子状態を変えることによって光を制御する方法を研究していました。そのうちにフォトニック結晶についてテーマとして取り組むようになりました。小さいところに光を閉じ込めたり、孔を少し動かすことで特性がかわるなど、様々な発見が面白く続けてきました。
そのうちにニューラルネットワークが、主に画像認識分野で注目されてきたため、入門書を読んでみたところ、これは光を閉じ込めて制御する私の研究にも使えると考え、取り入れることにしました。
光・量子技術は、これからの世界を支える鍵となる技術の一つと言われています。Chat GPTをはじめ、AIの進展が目覚ましい現在ですが、こうしたサービスでは、10ギガワット、つまり原発10台分のデータセンターが計画されるなど、大量のエネルギーを必要とします。光電子融合回路や量子計算の発展によって、省エネルギーで同じ処理ができるようになれば、たとえばデータセンターの消費電力を下げることができます。私たちの新しい光制御技術で、人類みながAIをつかっても電力が足りなくなることはないような、これからの世界をつくる一助を担いたいと思っています。
人材が必要です。この研究には、機械学習やAIに対する知見と、光の制御・シリコンの加工といった物理に関する知見との、両方をもっている人が求められています。私はそういう人材になりたいと思って取り組んでいますが、ひとりでは研究が目指す先は実現できませんので、そうした知見をもつ方々の協力を得て進められたら嬉しく思います。