結晶材料のミクロ組織について研究しています。ミクロ組織とは、材料中に存在する結晶の方位、大きさ、形状の分布、組成分布などの総称です。金属の凝固、加工、熱処理といった材料プロセスでミクロ組織が変化をし、材料の力学特性、電気特性、熱物性、触媒特性、磁気特性とあらゆる特性に影響します。研究では、ミクロ組織を電子顕微鏡や量子ビーム解析によって観察・分析し、可視化と定量評価を進めています。ミクロ組織を観察すると、場所によって界面や欠陥の分布状態が違うところがあります。研究を進めて、このような変形ミクロ組織発達のメカニズムを調べるとともに、結晶材料のミクロ組織と機能との関係を定量的に解明したいと考えています。
高校生の時、大学の見学で電子顕微鏡をみて「ミクロ組織の写真が綺麗だ」と感じ、この分野に興味をもちました。中でも、例えば金属を薄く潰して伸ばすなどして結晶材料が変形された時にできるミクロ組織について、なぜこのような美しいパターンが形成されるのか関心をもっています。電子顕微鏡を自分で操作しているうちに、観察者の腕で写真の綺麗さが変わるこの世界がどんどん面白くなってきました。また、みんなが知らない結果を最初に独り占めできることも魅力です。博士課程では多元素を高濃度で混ぜたハイエントロピー合金という材料を対象にしていましたが、純金属でもわかっていないことが多くあることに気づき、元素2つを混ぜた単純な合金の研究を始めました。
ミクロ組織の解明によってほしい特性の材料をつくることができれば、あらゆる分野で応用ができます。たとえば力学特性では地震が来ても崩れない家を作る、また欲しい物質をたくさん製造できる触媒をつくるといったことが可能になります。私としては、産業界でほしい特性を尖らせていくというよりは、尖らせるために、どのような支配因子があるのか、それを解明していきたいと考えています。
研究では、結晶材料をつくり、観察・分析をして特性を評価しています。これまで研究室では主に力学特性を調べてきましたが、最近興味を持ち始めた電気特性、熱物性、触媒特性、磁気特性などほかの特性の評価方法にノウハウがないため、ぜひこの分野が得意な研究者の力を借りたいと考えています。