コンクリート系の柱や梁などの構造のうち、とくに「アンボンドプレストレストコンクリート(アンボンドPC)構造」と呼ばれるPC構造について研究しています。PC構造は、あらかじめコンクリートに圧縮力を与えることで、引っ張りに弱いという特徴を改善する構造です。一般的なPC構造では、PC鋼材とコンクリートを一体化させますが、アンボンドPC構造では両者を一体化させません。そのため、この構造は施工を簡略化できるだけでなく、地震時にコンクリートが損傷してもPC鋼材の変形を抑え、建物の損傷を防いだり、軽減したりすることが期待できます。研究では、実際に柱や梁を製作して載荷実験を行うほか、建物全体の挙動を解析するモデルを構築し、シミュレーションすることによって、従来の構造計算を用いることによる妥当性を検証し、この構造の普及に貢献したいと考えています。
私は学部時代から現在まで同じ研究室に所属していますが、博士課程では別のテーマを研究していました。その後、さまざまな研究テーマに触れるなかでアンボンドPC構造に出会いました。アンボンドPC構造は、長年にわたり研究が続けられてきたにもかかわらず、アメリカ等の海外では実用化が進んでいる一方で、日本では十分に普及していません。日本には、地震に対して厳しい設計基準があるため、新しい構造を導入するには十分な研究成果や設計手法の整備が必要なのです。優れた性能がありながら活用されていない現状を「もったいない」と感じ、この構造を日本でも使えるようにしたいと考え、研究を始めました。
昨今の建設業界では、人手不足や施工現場の省力化が大きな課題となっています。従来の構造では、PC鋼材を通した後に隙間にセメントを流し込む、グラウト充填作業が必要ですが、アンボンドPC構造ではこの作業を省略できるため、施工工程を簡略化でき、省力化につながる可能性があります。また、コンクリートとPC鋼材が別々の挙動をするため、地震時の損傷リスクを減らせることも期待されます。そこで、これまで積み上げられてきた研究の歴史に続いて、新しい実験と解析のアプローチによって、既存の設計法を適用できる道筋を示すことで、設計者が採用しにくい現状を改善し、この構造の普及につなげたいと考えています。将来的に、この研究成果によって、アンボンドPC構造の建築物が実際に建てられたら嬉しく思います。
現在、従来の実験や解析に加え、コンクリート表面に発生するひび割れを可視化する技術にも取り組んでいます。研究を進展させるには、そうした新しい着想や方法を取り入れていくことが重要と考えています。近年はAI技術の進歩も著しく、こうした技術を導入することも必要でしょう。建築分野だけでは限界もあるため、計測技術や情報処理を専門とする電気や情報分野の方々との連携ができたら嬉しく思います。