生命を織り成すペプチド分子に着目し、ペプチド分子の機能を利用した高分子材料の研究をしています。ペプチド分子を自己組織化させナノスケールでの構造制御を可能にし、メゾスコピック領域でのペプチド材料の創発を目指して研究を進めています。
例えば、ペプチド分子の親水性と疎水性のバランスを設計して自己組織化挙動を制御し、DDS(ドラッグデリバリーシステム)に活用できるナノ粒子の構築を目指しています。また、ペプチド分子のダイポールに着目し、金基板上で自己組織化させたペプチド薄膜を用いて分子レベルの回路として機能する分子ダイオード素子や光電変換素子の構築に成功しました。
生化学の教科書でしか触れていなかったペプチドを、自分で自在に設計して合成し、材料としての機能を新たに見つけることが面白いからです。アミノ酸の配列とタンパク質の構造や機能の間には未知のルールが沢山眠っています。ペプチド分子の機能を引き出した新しい材料を研究する過程で、生命がアミノ酸を選んだ意味に少しでも近づきたい、というのがこの研究のモチベーションです。一方で、ペプチド分子は分子自体の性質を魅せる切り口で、医療材料や電子材料など様々な用途に繋がる可能性を秘めていることも、材料としての魅力の一つです。
「自分の思い通りの機能を付与した材料をペプチド分子を設計するだけで実現できる」ということが目指している道の一つです。生体において、抗体や光合成タンパク質、ピエゾタンパク質などタンパク質は様々な機能を実現しています。突き詰めると分子間力などのナノスケールの力を如何に利用するかに尽きると考えられます。つまり、メゾスコピック領域でのペプチド分子の自己組織化挙動や性質を見極めることで、ペプチド分子の振舞いや個性を理解できるようになると考えています。ペプチド分子一つ、あるいはペプチド分子集合体やペプチド薄膜で機能を実現できれば究極の素子になると期待しています。