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地盤と構造物の相互作用を解明し、土木の現場に活かしたい!

RESEARCHER
地盤と構造物の静的・動的な相互作用について研究をしている。 遠心力載荷装置等を用いて模型実験を行い、また、有限要素法による数値解析を進めている。

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高速道路の本線と一般道を立体交差させる際、トンネルを先につくってから土で埋め戻すカルバートという構造が採用される。近年では、現場での省力化や品質の確保を目的として、主要部材をプレキャスト化し、工場で作ったものを現場に運んで組み立てる「ヒンジ式プレキャストカルバート」という新しい工法も進んでいる。しかし、地震時にヒンジ部が弱点になる懸念があり、限界状態を含めた検討が必要である。

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ヒンジ式プレキャストカルバートについて、大型模型を作製し、強地震動を作用させる実験によって“壊れ方”を観察し、設計に役立てる研究を進めている。さらに数値解析によって鉄筋の損傷状態を再現することに成功した。

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帯鋼補強土壁は、1960年代にフランスで開発され、日本をはじめ世界中で長年使われてきた工法である。壁の後ろに入っているストリップ(帯鋼)の摩擦により壁が抜け出さないようにしている。しかし、地震の少ないフランスで開発された技術であり、実績としては地震で損壊したことはあまりないが、実際には地震に対する挙動があまり分かっていない。

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帯鋼補強土壁について、土の応力状態を再現できる遠心力載荷装置を用いた模型実験を実施し、補強土壁の地震時挙動について研究を行っている。例えば、これまで医療や自動車分野で使用されてきた面圧測定システムを新たに導入することで、壁の裏にどのような土の圧力がかかっているのか調べた。研究の結果、補強土壁の地震時抵抗力のメカニズムを明らかにし、設計法の合理化に資することができた。

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軟弱地盤や液状化地盤に建設される杭基礎は、現行の設計法に基づいて耐震照査を行うと、許容水平変位や許容応力度を満たすことができない場合がある。設計基準を満たすためには、大型の杭を用いる、杭本数を増加させるといった措置をとるが、これに伴いフーチングも拡大するなど、下部構造を大規模化する必要に迫られる。これにより建設コストや工期の増大、建設に必要な用地が拡大するなどの問題が生じる。

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そこで、フーチング下部に地盤改良を施工し、杭の水平抵抗を増大することで杭本数やフーチングを縮小する複合杭基礎に着目している。これまで研究事例が少なかった液状化地盤に建設された条件について遠心模型実験と数値解析を実施し、複合杭基礎の優位性を明らかにした。

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鋼管集成橋脚は、既製鋼管4本を、履歴型ダンパー機能をもつせん断パネルにより結合した新しい形式の橋脚である。また、杭基礎一体型鋼管集成橋脚は、鋼管集成橋脚が柱部で地震時のエネルギーを吸収し、下部構造に伝わる作用力が減少することに着目し、フーチングを省略し、基礎構造の合理化を目指した新しい工法である。この工法の地震時の挙動を確認するため、1/20スケールの大型振動台実験とその数値解析を行った。その結果,杭の荷重負担の軽減等のこの構造の利点の検証とともに、地震時にも優れた変形性能を有していることを確認した。

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ドロドロの高含水泥土を処理する際にはセメントが使われることが多いが、固まってしまい産業廃棄物として扱う必要があった。 そこで、紙に含まれる「セルロース」に注目し、シュレッダーなどの古紙を微細に粉体化した製品「セルドロン」を開発した。

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「セルドロン」は、土木の分野としては珍しく、ベンチャー企業とともに製品化し、すでに現場での応用が進んでいる。「セルドロン」を高含水泥土に混ぜると、水の含有量は変わらないが、セルドロンの吸水作用により即座に乾燥した普通の土のように扱える。トンパックに詰めて移動することもでき、溜池やダムの浚渫、土砂災害対策・復旧や、掘削泥土の処理などの効率化に役立てることができる。

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紙の原料のほとんどは木材であり、木材の約50〜55%はセルロースで構成されている。開発した「セルドロン」は、セルロースによって吸水性が高く、また繊維質のため、ひっぱりにも強く、高いせん断強度がある。

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オフィスや出版物などにおいて需要が減ってきている紙の新たな応用先として、製紙会社と連携し、古紙だけではなくバージンパルプを使った「セルドロン」の開発を進めている。古紙は回収する必要があり、印刷のインクやホチキスの芯などの不純物の課題があるとともに、古紙に比べてバージンパルプは約3倍吸水性が高いことが分かっている。現在、パルプの種類による吸水量の比較実験を行うなどの研究を進めている。

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「セルドロン」の技術の社会実装として、エチオピアで現地の大学との共同で研究を進めている。エチオピアに広く分布するブラックコットンソイルと呼ばれる膨張性粘性土は、雨季には水分を含んでドロドロになり、一方、乾季には乾燥でカチカチに固まって通行を妨げるという課題がある。この課題に対して、現地の素材を使って解消できないかと考え、現地の植物であるエンセーテやサトウキビの搾りかすなどを材料に土質改良材の開発を行っている。

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どんなタネ?

地盤分野の研究者として、土木構造物の現場に地盤に関する知見を活かす研究をしています。

杭、トンネル、補強土壁などを造る時には安全率を考慮して設計しますが、地盤は地域や環境によって変わる不均質な材料であるため、構造物への地震の影響はまだ分かっていないことも多いのが現状です。そこで、さらなる設計の効率化を目指し、地盤と構造物の静的・動的な相互作用について、模型実験と数値解析を用いて研究を進めています。また、地盤改良の新しい技術として、多量に水分を含む泥土を即座に処理するため、古紙を微細に粉体化した「セルドロン」を開発しました。この技術を使い、雨季に土がドロドロになり通行を邪魔するエチオピアでの社会実装も行っています。

なぜ研究を始めた?

工学部で研究を進める者として、新しい工法が世の中に浸透していくことに面白さを感じています。例えば「セルドロン」は紙の主成分であるセルロースに着目し、化学的な反応ではなく物理的な吸水作用によるこれまでに無い新しい泥土処理技術を提案しました。自分一人では難しくても、研究によって分かったメカニズムを基礎として、企業の方と協力し、既存の工法や構造を変えていくことができます。

土の研究分野にはとても幅があります。材料としての土をテーマにする人も、土の力学モデルを数学的に開発することをテーマにする人もいますが、私はモノを造ることに関心があります。土木構造物は、必ず土の中、土の上に建っています。それらの構造物をさらに良く、造りやすくするために、土と構造物の相互作用の研究を進めたいと考えました。

なにを変える?

地盤と構造物の相互作用の研究では、既存の構造物の合理化や省力化,これまでにない新たな形式をもつ構造物の創造に貢献したいです。工学部の研究者として、状況に応じて最適化した最善の答えを出して設計に反映していく責務があると感じています。

また、「セルドロン」においては、SDGsなどが注目される中、できるだけ環境負荷の小さい技術の実現を目指しています。実はまだ様々な用途があるのではと考えています。例えばエビの養殖では、土の中で糞をするため何年かごとに取り替える必要性がありますが、そうした土壌を産業廃棄物にするのではなく、セルドロンのような新しい材料によって生分解性をもったものにすることも可能かもしれません。

なにが必要?

パートナーが重要です。研究はメカニズムの基礎の部分です。それを活かす現場が必要なのです。様々なパートナーの方々と連携して、官民のフィールドで研究を進めたいと考えています。特に社会基盤、社会インフラに携わる方々にご協力をいただき、現場への貢献を目指したいです。

また、様々な分野で計測は要となります。新しい計測の技術が開発されると、その分野が大きく進展することがあります。情報分野など、異なる分野で計測について研究している方々にも、新しい概念で、ご自身の技術を活かす先として土木にも関心をもっていただきたいと思います。

VIDEO MATERIAL
1. エチオピアで、雨季にドロドロになった泥土を現地の在来植物を用いて改質するため、材料として注目している植物であるエンセーテを採取する様子。 2. プレキャストアーチカルバート(トンネルの一種,高速道路との立体交差などに使われる)についての大型模型を作製し、強震応答実験を行っている様子。
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