地盤分野の研究者として、土木構造物の現場に地盤に関する知見を活かす研究をしています。
杭、トンネル、補強土壁などを造る時には安全率を考慮して設計しますが、地盤は地域や環境によって変わる不均質な材料であるため、構造物への地震の影響はまだ分かっていないことも多いのが現状です。そこで、さらなる設計の効率化を目指し、地盤と構造物の静的・動的な相互作用について、模型実験と数値解析を用いて研究を進めています。また、地盤改良の新しい技術として、多量に水分を含む泥土を即座に処理するため、古紙を微細に粉体化した「セルドロン」を開発しました。この技術を使い、雨季に土がドロドロになり通行を邪魔するエチオピアでの社会実装も行っています。
工学部で研究を進める者として、新しい工法が世の中に浸透していくことに面白さを感じています。例えば「セルドロン」は紙の主成分であるセルロースに着目し、化学的な反応ではなく物理的な吸水作用によるこれまでに無い新しい泥土処理技術を提案しました。自分一人では難しくても、研究によって分かったメカニズムを基礎として、企業の方と協力し、既存の工法や構造を変えていくことができます。
土の研究分野にはとても幅があります。材料としての土をテーマにする人も、土の力学モデルを数学的に開発することをテーマにする人もいますが、私はモノを造ることに関心があります。土木構造物は、必ず土の中、土の上に建っています。それらの構造物をさらに良く、造りやすくするために、土と構造物の相互作用の研究を進めたいと考えました。
地盤と構造物の相互作用の研究では、既存の構造物の合理化や省力化,これまでにない新たな形式をもつ構造物の創造に貢献したいです。工学部の研究者として、状況に応じて最適化した最善の答えを出して設計に反映していく責務があると感じています。
また、「セルドロン」においては、SDGsなどが注目される中、できるだけ環境負荷の小さい技術の実現を目指しています。実はまだ様々な用途があるのではと考えています。例えばエビの養殖では、土の中で糞をするため何年かごとに取り替える必要性がありますが、そうした土壌を産業廃棄物にするのではなく、セルドロンのような新しい材料によって生分解性をもったものにすることも可能かもしれません。
パートナーが重要です。研究はメカニズムの基礎の部分です。それを活かす現場が必要なのです。様々なパートナーの方々と連携して、官民のフィールドで研究を進めたいと考えています。特に社会基盤、社会インフラに携わる方々にご協力をいただき、現場への貢献を目指したいです。
また、様々な分野で計測は要となります。新しい計測の技術が開発されると、その分野が大きく進展することがあります。情報分野など、異なる分野で計測について研究している方々にも、新しい概念で、ご自身の技術を活かす先として土木にも関心をもっていただきたいと思います。