LEDの光を有効活用し、世の中の光源を明るくしようと研究を進めています。白色のLEDは、青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた構造です。一方、LEDの次の光源として、明るくて指向性が高い白色LD(レーザーダイオード)が注目されています。しかしLDは、LEDに比べて空間分布に偏りがあるため、黄色蛍光体と組み合わせても均一に光る白色光が得られません。
そこで、青色LDに周期構造の「ナノアンテナ」をつけることで、指向性を保ちながら均一に光る光源を開発しました。正面方向に7倍光を増強することに成功し、今後は、20倍まで効果を高めることを目指して研究を進めています。
当初、ナノエレクトロニクス分野で、ナノアンテナを使って発光層に光を閉じ込め、発光を増強する研究をしていました。その際に、発光層をさらに分厚くしても増強する可能性があることに気づきました。そこで、マクロの照明にも組み込み、さらに明るく、指向性のある光源の開発に挑戦することにしました。
顕微鏡下で、肉眼では見えない小さな構造を作って研究していた発光増強が、「明るくなる」という目で見える現象として、効果を得られることに面白さを感じています。
もともと光や色に関心があり、綺麗なものを扱いたいという興味がありました。それに加えて、エンジニアリングの思考から、このように出口が見え、追及する価値がある現象だと感じたことが、研究を続けるチベーションになっています。
現在、LEDはあらゆるところに使われている照明ですが、このように指向性をもった光源ができれば、世の中に普及している照明のデザインが変わってくると考えます。
街頭やスタジアムの照明、バイクのヘッドライトや信号も、現在中に入っている光源に対して最適な形になっています。ナノアンテナを使った照明になれば、形が大きく変わりますし、大きさもより小さくてよくなるはずです。現在のデザインの制約になっている光源が変われば、街、家からオフィスまでのデザインが大きく変わるでしょう。このように、日常の中で当たり前にこういうものだと思っていた光が、より便利に変化していけば嬉しく思います。
現状の技術でも、ナノアンテナの技術とうまく組み合わせることで、光を100%有効活用する照明を達成できるのではないかと考えています。この研究に関係する周辺分野の方々にも、ぜひともご協力いただけるならば大変助かります。様々な知見と協力を得て、最終目標を達成したいと考えています。