下水を高度処理して安全に再利用するための膜処理技術を研究しています。膜処理は病原微生物や微量化学物質などを除去できる技術ですが、その除去率は、孔径などの膜の特性、汚染物質の物性、原水水質、膜の運転条件により大きく異なります。下水中の汚染物質の膜での除去特性を明らかにし、効率的な膜処理と下水再利用の実現を目指しています。
世界的に増大する水資源需要をダム開発や地下水利用のみで賄うことは困難です。都市で利用され捨てられてきた下水は有望な代替水資源であり、膜技術等により質的に改善した下水再生水は、水が足りない地域での人々の生活、経済活動、健全な水環境を支えうると考えました。
膜技術を中心とした下水再生処理を、下水処理場のような大規模集約型の施設だけでなく、都市ビル、事業所、家庭、避難所といった“小規模分散型”の施設にも導入できる手軽なシステムに変えていきたいです。安心・安全な水をいつでも使える水循環型のスマートシティーを構築したいです。
下水再利用の経済的なハードルと心理的なハードルを下げる必要があります。現在は新素材の膜や光触媒という素材を用いて、汚染物質の除去に優れる低コストな下水再生処理システムの開発を進めており、将来的には実際の現場で下水処理システムを導入する立場の方々と協力して研究を進めたいです。また、2007年に開催された「Water展」のような、「水」をテーマにしたアートイベントを開催し、下水再利用に興味のない方々にもその価値を楽しく知ってもらう機会をつくりたいと考えています。京都は学問もアートも息づく街なので、エンジニアとアーティストのコラボでおもしろい発信ができたら嬉しいです。