金や鉄シリコンなど、レーザーをあてると光を熱に変換する薄膜があります。その膜に水をのせ、表面をレーザーで加熱すると、局所的に沸騰が起きて泡ができます。この時、水を脱気しておくと泡が小さくなり、この泡が自励振動し、周りに大きな流れを起こすことを発見しました。この現象に着目し、泡とその周りの水の動きについて研究をしています。
一つは、光の干渉を使って、泡の周りの温度分布を可視化することで分析を進めています。さらに、レーザーを2つに分け、強度を変えて温度勾配をつくることで、流れを制御することに成功しました。そして、泡を2つ以上に増やして並べることで、泡の振動と流れを制御することにも挑戦しています。また、水だけではなくアルコールを混ぜるなど、様々な研究を進めています。
少量の水流の制御は、ラボオンチップや水冷の技術の向上のために注目されています。そうした応用を見据えながら基礎研究を行っています。
はじまりは偶然です。もともと博士課程の終わりに薄膜の研究をしていました。その時の指導教官の先生に、レーザーをあてて流体を動かすようにと言われ、膜の上に水をおいてレーザーを当ててみたら泡と流れができました。これを流体の研究をしている先生にお見せしたところ、とても面白いという反応をいただきました。さらに研究を進めたところ、水を閉じ込めるセルを封止していたマニキュアの成分が予期せず水に溶け出すことで、この「小さな泡で大きな水流ができる」現象をたまたま発見したのです。さらに、この泡が振動しているのではないかという指摘を受けたことから、現在の研究テーマへと至った次第です。
究極の目標として、流体界面をつかって、映画の『ターミネーター2』のように流体を自在に動かせたら面白いと考えています。現在は、泡か液滴に関係するところから進めており、直近の目標は、泡の挙動を正しく理解し制御できるようになることです。
沸騰の研究は、歴史が長いのですが、そこで扱う泡の挙動は複雑で、解析することが難しいという状況があります。そこで、対象を小さい泡に限り、泡の振動といった基礎的な動きについて研究しやすいサイズにすることで、泡と流れの起源といった基礎的な現象の解明を目指しています。また、近年着目されている生化学検査のラボオンチップやマイクロ水冷の装置も、この研究で扱っているようなマイクロメートルの小さな流路であり、研究が進めば、それらを制御する技術になり得ます。社会的にはこうした分野への応用とともに、泡に関係する産業への貢献も期待できるでしょう。
共同研究は必須であると考えており、すでに様々な協力者と進めています。また、産業応用という意味でも連携先が必要であり、水冷やクリーニングなど、様々な研究に着手しています。
現在、泡を軸にして様々な可能性を共同研究で広げているところですので、ぜひとも泡で困っている方や、泡について気になることのある方にはお声がけいただきたいです。