「地下で、水がどこから来てどのように動いているか」、「水とともに溶存物質や熱がどのように運ばれるか」を理解するための研究をしています。化学的な分析や、地質構造を考慮して作成したモデルを用いた数値シミュレーションを活用し、地球浅部での水・物質・熱の動きを評価する手法の確立を目指しています。インドネシアなどの地熱地域では地熱流体の循環状態に関する研究を行っています。京都では、地中熱の有効利用のため京都盆地の水理地質モデルを作成して地下水の流 動状態を推定するとともに、京大宇治キャンパスに地中熱ヒートポンプエアコンを設置して地中熱利用の実証試験を進めています。 水は様々な資源やエネルギーに関係し、それらを持続的に使っていくためには水の動きを理解することが重要と考えます。
もともとは地質工学が専門で、岩石や鉱物を対象に研究していましたが、ポスドクとして着任した研究所で地下水の研究をはじめました。地下水の滞留時間を推定することで地下水流動の活発さを把握し、高レベル放射性廃棄物の地層処理に役立てる研究です。私が研究対象とした地域の地下水では数百万年というオーダーの滞留時間が推定されており、地下水の地球化学的な分析からそのような非常に長い滞留時間がわかること、推定された滞留時間が地層処分という社会的に重要な課題の解決に役立つことに面白さを感じました。地下水はそれ自体水資源ですし、地下の水の流れに伴って溶存物質や熱も運ばれることから、汚染物質の移行や地熱・地中熱エネルギーの利用など、人間の様々な社会的課題に水は関わっています。それらの課題に対して、最先端の手法によって貢献できることがやりがいです。
社会的には、水資源の持続的な利用、地熱や地中熱の更なる活用、安全な地層処分の実現などに役立つ技術を生み出し、持続的な社会の実現に貢献したいと考えています。学術的には、まだまだ理解が進んでいない地下の水の動きを解明していきたいです。例えば、地熱流体はどこからきていて(雨水?海水?マグマ水?)、起源の異なる水がどれくらいの割合で混じり合っているか、滞留時間はどれくらいか、などについてです。インドネシアの地熱流体の研究では、滞留時間が17万年以上の水が含まれる可能性があることがわかってきました。水の地球化学的特性の分析や、数値シミュレーションなど様々な手法を組み合わせて、地下の水の動きとそれに伴う物質、熱の動きを解明していきたいです。
「時間が欲しい・・・」という思いが一番ですが、構築した手法を社会実装していくためには異分野の方々との交流も 必要と考えています。企業や自治体などとも連携し、資源やエネルギーに関わる社会的に重要な課題の解決に役立つ手法やデータが提供できるようになると嬉しいです。また、現状我々ではできない地球化学成分の分析を可能にするネットワークづくりも進めていきたいと考えています。