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なぜアレルギーが増えている?身近な化学物質の影響を解明し、ヒトの健康と環境を衛りたい。

RESEARCHER
近年、気管支喘息、鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーといった何れかのアレルギー疾患患者が増加している。アレルギーは、遺伝的要因でなりやすさが決まり、その上に環境要因が加わることで、発症したり悪化したりする。環境要因としては、居住環境、食環境、衛生環境、水・大気・土壌など様々なものが考えられ、身近な化学物質は増加しているといえる。研究では特に空気中の微小な粒子状物質に着目して健康影響を調べている。粒径が10㎛より小さくなると肺の中に入り、呼吸器疾患に悪影響があるといわれている。写真は実験風景。

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多くの人々が利用する公共的、閉鎖的空間の代表として地下鉄構内に注目した。地下鉄構内で発生した粒子の成分分析を行ったところ、αFe2O3とFe3O4というという酸化鉄が検出された。地下鉄がブレーキをかけて駅で停まるときに粒子が発生している可能性がある。

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これらの酸化鉄粒子の標準品を気管支喘息モデルマウスに経気道曝露(呼吸器を介して肺に投与すること)して病態の変化を見た。肺をホルマリンに固定して観察したところ、気道上皮細胞の粘液分泌が増加し、炎症がひどくなり、気管支喘息の病態を悪化させるということがわかった。画像は微小な粒子を投与したマウス肺のホルマリン標本。

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PM2.5は、粒子と莫大な数の化学物質の集合体であり、人の活動によって発生する。成分は金属や有機炭素など、様々な化学物質が含まれており、呼吸器・免疫系疾患である気管支喘息を悪化させることはわかっているが、原因物質は特定されていない。そこで、細胞をつかったPM2.5のスクリーニングを行った。一連の研究により、これまで実験的に解明されていなかった日本のPM2.5の健康影響について成果を得た。写真は実験風景。

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工業地域の川崎市や越境汚染が懸念される福岡市でPM2.5を採取し、ヒトの気道上皮細胞にPM2.5から抽出した成分を曝露した。その結果、炎症を誘導するタンパク質であるIL-6が産生することがわかった。また、免疫応答の開始細胞である抗原提示細胞や、脾臓細胞など、様々な細胞への悪影響も見られた。画像は微小な粒子を投与したマウス肺のホルマリン標本。

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採取した粒子成分の測定をして、細胞の炎症と各成分の相関関係について検証を行った。様々なPM2.5を曝露させた結果、炎症反応の悪化に関して、チタンが影響規定成分の1つである可能性を発見した。実験動物で炎症を誘導するタンパク質であるIL-6の産生について調べた結果、チタン濃度が高いとIL-6が多く、気道の炎症を引き起こすことが確かめられた。また、マウスの肺の中でのチタンの分布を顕微鏡で観察すると、炎症が強いところに集中していることも分かった。肺の中の免疫細胞であるマクロファージの中にチタンが含まれていた。

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どんなタネ?

環境化学物質が健康に及ぼす影響を研究しています。特に、近年増加しているアレルギーを悪化させる要因として、空気中に浮遊する微小な粒子状物質に注目しています。

共同研究者の先生に採取していただいた地下鉄構内で発生した粒子(レールや車輪の摩擦によって発生する可能性)の成分を調べたところ、酸化鉄が多く含まれていることがわかりました。これらの粒子を、気管支喘息をもつモデルマウスに投与して病態の変化を見たところ、気道の炎症が悪化するということを発見しました。

また、微小粒子状物質(PM2.5)についても実験を行いました。多くの方々の協力のもと、国内・アジア地域の複数個所で採取されたサンプルについて、細胞を使ったスクリーニングを行ったところ、チタン(Ti)が健康影響を悪化させうる物質の1つであることを発見しました。また、TiO2微粒子をマウスに投与すると、気道や肺胞に集まってきた免疫細胞に炎症反応を引き起こすことを突き止めました。

今後、私達が何気なく利用している日用品や現在問題となっているマイクロプラスチックなど、対象を広げて研究を進めていきたいと考えています。

なぜ研究を始めた?

小さい頃に感動していたスタジオジブリの映画には、環境問題に関わるテーマが多く、環境に関わる仕事がしたいと思うようになりました。また、実家が調剤薬局をしていた影響もあり、薬学と環境の双方を学べる道として、環境衛生の分野に進みました。しかし、大学院での研究では、多くの研究者が感じているようなワクワクという気持ちより、研究は大変だという気持ちの方が勝っていました。一旦、環境を変えようと、医薬品分析会社の会社員を経験しましたが、大学院の時に指導していただいた先生から誘っていただき、もう一度研究の道に入ることになりました。人との出会い、めぐり合わせは、本当に大切だと感じます。

今は、環境を守ることに繋がるというやりがいをもって研究を進めています。これは、多くの方々の協力や支えのおかげです。一方で、どれだけ研究を進めても、実際の環境問題は、複雑で簡単には解決できません。今後は、研究に加え、環境影響評価など、専門家としての立場から行政の仕事に携わることで、現実世界の環境を守れるところに近づきたいと考えています。

なにを変える?

まず、環境を変えることにつながります。例えば、PM2.5は、ニュースで『比較的高い濃度が観測…』と言われるように、今は全体の量だけで規制されています。しかし実際に研究をしてみると、PM2.5には悪いものもそうでないものもあり、PM2.5に含まれる成分に依存すると考えています。こうしたものを特定し、PM2.5に含まれる個々の化学物質による規制が可能になれば、予めそれらを排出しないような燃料や製品の作り方をするなど、環境へのよりよい対策をすることができます。

また、アレルギー疾患の治療への貢献も期待されます。研究では、化学物質を実験動物に投与すると、疾患を悪化させることがわかっているため、ヒトについても研究を進めていけば、将来は、簡単な血液検査などで『どの化学物質をどのくらい吸い込んでしまったか』が分かり、アレルギー悪化の原因特定に繋がるかもしれません。私たちの生活環境には、とてもたくさんの化学物質が存在していますが、知らぬうちに体に入ってきた化学物質の健康への影響を特定できれば、環境因子に注目した治療が可能になるでしょう。

なにが必要?

現在、私の仕事の役割の多くは、すでにある環境化学物質の悪影響を指摘することです。しかし、原因となる環境化学物質が世に出る前に介入することができれば、そもそもの排出を防ぐことができるかもしれません。もちろん、未然に防ぐための規制や、様々なメーカーさんの中で、安全性評価をする研究所をもっているところもあります。一方で、あらゆる疾患を悪化させる化学物質を事前に検出するようなシステムを構築することは、かなり難しい側面があるとも言えます。ヒトの健康、環境、化学物質がバランスよく共存するために、ぜひ化学物質が世に出る前に、最も健康リスクを抑える方法を共に考えることに関わらせていただけたら嬉しく思います。

もう一つ大切なことは、環境と健康に関わる研究を、多くの若者が賛同、理解し、続けてくれることです。私自身、数多くの先生方の指導、助言や協力を得て研究を続けてきました。力不足の場合もありますが、自分なりに受け取った、たくさんのバトンを1人でも多くの学生に渡すことができればと思っています。

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