高分子ゲルの強度を向上させるための研究をしています。既存の実験からは、強度をあげる様々な要素がわかっていますが、シミュレーションによってそのメカニズムを明らかにすることができます。複雑に架橋された状態の高分子に対して、変形させた時の各々の分子が向いている方向や架橋点の数の推移などを計算し、実験結果と照らし合わせます。また現在、重合速度が早いフリーラジカル重合と遅いリビングラジカル重合の、反応速度による構造と物性の変化にも取り組んでいます。
自分の想像したことを計算し、現実を説明できるシミュレーションは面白いです。学生時代は実験をしていて、実験の結果が「なぜ起こったのか」を想像しても、実験的な手法だけでは検証できないと感じていました。その後企業に勤めものづくりに専念したことで、シミュレーションと実験との橋渡しの重要性に気づきました。シミュレーションは見る側がリテラシーをもてば、実験に十分に活用できる材料となります。両者を繋げる役割を担えればと思ったことから今の研究に至ります。
まずは材料開発への貢献ができればよいと思っています。特にゲルに関しては、構造をはっきり知り、起こっている現象への理解が深いと、開発における無駄を省くことにも繋がります。シミュレーションが設計指針の一助になればと考えています。
実験をする方とのコミュニケーションを増やし、どんどん情報を得られる機会があると研究がより進むと思います。論文では実験結果を集めても、その環境をどれだけ構築できるかには困難があります。研究室には実験をする方もいるので、自分自身も実験に積極的に関わり、実験データでバックグラウンドを補強しながらシミュレーションを構築する方向性を強めていきたいと感じています。