電子線ホログラフィーという方法を使ってナノ粒子の磁性体を観察し、磁性の構造を研究しています。鉄ゲルマニウム(FeGe)という材料をつかい、正四面体のナノ粒子をつくりました。これにより、70ナノメートルという長い周期のらせん状の磁気構造を安定化させることで、はじめてナノ粒子内部の立体的な磁気構造を観察することができました。
ホログラフィーに高い関心をもっています。薄膜形状の材料の磁気構造を見るという研究はありますが、複雑な形状の材料について見る方法はこれまでになく、電子線ホログラフィーでしかできない研究です。この手段をつかって、磁気秩序と幾何学的な拘束の競合をテーマにすることで、独自性のある研究を目指しました。
ナノ粒子内では、『渦』と『粒子』という2つの特長を持つ『たる状』の未知の磁気構造が安定になることが分かりました。これにより磁気構造を『数える』ことが可能となるので、磁気メモリ素子として応用が可能になるかもしれません。幾何学的な拘束条件が新しい磁気構造を生み出す鍵となることは、非常に面白いと考えています。
今回、ユニークな形状の粒子がこの研究のきっかけになりました。さらに研究を進めるために、ナノワイヤーやナノ粒子、極薄の薄膜などの磁性材料をつくるノウハウを持っている方と連携したいです。