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有機化学の力で新しい分子をつくりだし、光と色を操りたい!

RESEARCHER
① 研究室で合成したポルフィリン:テトラフェニルポルフィリン固体サンプルと溶液      ② 研究室で合成したポルフィリン:緑色のポルフィリン色素YD2(※展示している太陽電池素子の色素)     ③  強い発光を示すベンゾジホスホール分子        ④ 強い発光を示すベンゾジホスホール分子

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分子構造 ① 研究室で合成したポルフィリン:テトラフェニルポルフィリン固体サンプルと溶液 ② 研究室で合成したポルフィリン:緑色のポルフィリン色素YD2(※展示している太陽電池素子の色素) ③ 強い発光を示すベンゾジホスホール分子 ④ 強い発光を示すベンゾジホスホール分子

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研究室で作製・評価を行っている色素増感太陽電池素子

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緑色のポルフィリン色素を用いた色素増感太陽電池素子

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ポルフィリンは、植物の緑色の元となるクロロフィルや、私達の血液に含まれるヘモグロビンなど、自然界にも広く見られる骨格です。単純なポルフィリンは赤〜紫色ですが、分子の形を変えることで様々な色を示す色素をつくることができます。植物はクロロフィルをうまく活用することで、太陽光のエネルギーを光合成によって高い効率で化学エネルギーに変換しています。

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ポルフィリンのまわりにSやPのヘテロ元素を用いて新しい構造をつくることで、ポルフィリンの光を有効活用する性質と、ヘテロ元素の特徴を掛け合わせた分子を開発しました。 π共役分子の性質は、π電子の振る舞いの制御によってコントロールできます。どんな色(波長)の光を吸収したり発光したりするかはπ電子のエネルギーで変わりますし、有機太陽電池に用いる色素もπ電子がとても重要な役割を果たしています。

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研究室で合成・開発した分子の構造。 リンと硫黄をうまく組み合わせたベンゾジホスホール分子。分子の構造を少し変えるだけで発光色の変化や、電子を輸送する特性の発現が可能。 効率よく発電できる色素増感太陽電池のポルフィリン色素。

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色素増感太陽電池の発電原理と、ポルフィリン色素をつかった色素増感太陽電池を開発した。この太陽電池は、色素を吸着させた酸化チタン半導体電極と金属電極で電解液をサンドイッチした構造をしており、蒸着などの工程はいらず、空気下で材料さえあればつくることができる。手軽に作れて、軽くて曲げられて、光を通す透明な太陽電池やカラフルな色の太陽電池がつくれる、新しい有機太陽電池だ。

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色素増感太陽電池は屋内照明での発電効率が無機系太陽電池よりも高く、弱い光でも発電するため、屋内での使用に着目されている。 さらに、色素を選ぶことで発電に使う光(波長)を選んだり、半透明で光を通す太陽電池を作ることもできるため、屋外ではビニールハウスの屋根などで発電しながら、中の農作物の生育に必要な光は通すといった利用も考えられる。

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研究室で開発した色素増感太陽電池の電流・電圧特性評価の結果。既に10%を超える光電変換効率が達成されている色素GY50と比較した。DfZnP色素ではGY50(10.0%)よりも低い光電変換効率となったが(8.8%)、改良したDfZnP-iPr色素ではGY50に匹敵する光電変換効率(10.1%)を実現した。現状、色素増感太陽電池は、無機太陽電池よりも発電効率が悪く、電流、電圧ともに双方をよくすることで、さらに効率をあげることが課題である。

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太陽光は事実上無限のエネルギー源である。地球上のエネルギー問題についても、太陽光の効率的な利用によって解決できる可能性を秘めている。

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どんなタネ?

π共役分子について、とくに窒素N、硫黄SやリンPなど、有機化学の主役である炭素C以外のヘテロ元素をつかって新しい分子をつくることを目指しています。うまく設計して組み合わせることで、良く光る分子や電気を流す分子といった高機能な分子をつくることができました。またNを含むポルフィリンは植物のクロロフィルに見られ、光を効果的に捕まえることができという特徴を持ちます。そこでヘテロ元素と組み合わせるための手法を新規に開発し、目に見えない光も有効活用できる色素の実現を目指しています。また応用を見据えた研究では、π共役分子が光を吸収し、そのエネルギーを電子の移動として取り出すことができる性質を利用して、色素増感太陽電池を開発しています。

なぜ研究を始めた?

全く新しい分子をつくりたい、そしてその分子がどのようなものかを知ることで、分子の形とその性質の関係を解き明かしたいという思いがありました。

中でも、色がつくこと、光るということの面白さにひかれています。色がついていないものから色がつくものができる。色々な光るものができる。この形の分子だったらこんな色、こんな光の分子だったらこんな形、と繰り返すことで分子の形と性質の奥にある法則が垣間見えた時の楽しさで続けてきました。

それらのつくった分子を、太陽電池や有機ELといった使えるものにしていこうというのは自然な流れでした。特に光エネルギーの利用、そして太陽電池は面白いと感じています。太陽エネルギーを本当に使うことができたらエネルギー問題は解決するでしょう。

なにを変える?

新しい分子がつくれるかどうかは、分子の形を思いつくためのひらめきと、実現するための合成法にかかっています。この研究が進むことで、こんな形の分子・こんな合成法があるなら、こんな形の分子はどうだろう、と想像力が掻き立てられ、挑戦したいと思う人が一人でもいたら嬉しく思います。既に数十年間研究者が挑戦していても合成に成功していない分子がありますし、まだ誰も思いついていない分子も眠っているでしょう。また、色素増感太陽電池は屋内用途で大きな可能性を秘めているとも言われており、社会実装が進んでいけばIoT社会における存在感を増していくのではとも思います。

なにが必要?

有機分子をつくる合成反応は、どうしても手間と時間がかかるところです。実際につくるところでの手間を減らすための装置や、つくる前に理論化学による予測等を有効活用した分子設計ができると良いと思います。また研究室でつくっている太陽電池は、手でくみ上げることができて、誰でもつくれるのがよいところですが、人によって変わる要素が多くあります。将来的には安定性・均一性が求められると思いますので、できるだけ太陽電池をつくるときの様々な工程を自動化できるとよいと思っています。研究をさらに効率的に、効果的に進めるために、つくる人によらない部分を増やしていきたいと思います。

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INTERVIEW
桂産直便
有機化学の力で新しい分子をつくりだし、光と色を操りたい!

2023.01.27

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