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循環社会に向けて電気化学のアプローチで安全で高エネルギー密度の電池をつくりたい!

RESEARCHER
水溶液を使った水系リチウムイオン二次電池の実験の様子

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水溶液を使った水系リチウムイオン二次電池の解析結果。水だと電極と水溶液が反応して電気分解が起きるため、高電圧の電池としてはつかえない。しかし高濃度水溶液だと、電気分解がおこらない電位範囲である“電位窓”が広くなるという報告があり、中性電解液の濃度差による電位窓への影響を調べた。塩の濃度が濃く水が少なくなるほど電位窓が広がり、電位窓の水濃度依存性があること、また、中性だと電位窓が広がり、pH依存性があることがわかった。 また併せて、電極近傍で局所的にpHが変化することも計測によって確かめられた。

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応答電位のフッ化物イオン濃度依存性の実験の様子

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フッ化物シャトル電池について、有機電解液はフッ化物が溶けにくいという課題があるため種々の添加物を加えてフッ化物イオン電解液を作製することがある。この電解液中のフッ化物イオンの状態を調べるため、応答電位のフッ化物イオン濃度依存性を利用してフッ化物イオンセンサーを開発した。銀にフッ化銀を被膜したものを利用し、銀電極の電位が濃度に対して反応する。

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フッ化物シャトル電池の有機電解液について、リチウムイオンやマグネシウムイオンを加えると、フッ化物が溶けるようになる。このHybrid電解液の溶液内でイオンの状態を、電気伝導率を測定することで調べた。 溶液中でLi<sup>+</sup>とF<sup>-</sup>がくっついて沈殿するが、さらにLi<sup>+</sup>を加えると、Li<sub>2</sub>F<sup>+</sup>の三重イオンができるため溶けることがわかった。

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なお、マグネシウムでも調べ、Mg<sup>2+</sup>にF<sup>-</sup>2つの割合で沈殿するが、Mg<sup>2+</sup>が増えるとMg<sup>2+</sup>とF<sup>-</sup>が1つずつくっついた会合イオンとして存在できるため、フッ化物が溶けやすくなることがわかった。

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酸素極は、燃料電池や空気電池などに利用する電極である。 酸素還元反応は、酸素が水になるときのエネルギーロスが大きいため、触媒を開発することで効率化が目指されている。この触媒性能を測定するため、電圧をかけたときの電流の大きさを調べるが、その触媒性能をより詳細に測ることができないかと考え、新しい方法を開発した。 触媒と電子伝導体間距離を考慮し、電流電位曲線全体を用いて解析できる式を提案した。

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水系リチウムイオン二次電池の水溶液(左)とフッ化物シャトル電池のハイブリッド電解液(右)

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どんなタネ?

再生可能エネルギー発電の課題である電池について、特に電解液に着目をして研究しています。
リチウムイオン電池は、高寿命、高エネルギー密度の電池ですが、有機電解液を使うため高温で発火する可能性があります。そこで電解液に発火の心配のない水溶液を使った電池について、高濃度で高電圧化が可能である理由を研究しました。また、リチウムイオン電池よりも大容量で注目されているフッ化物シャトル電池について、電解液を調べるためのフッ化物イオンセンサーを作り濃度の定量的な測定を可能にするとともに、フッ化物のより溶けやすい電解液について調べました。さらに、燃料電池等で利用される酸素極について、触媒性能をより把握できる電流電位曲線解析法を開発しました。

なぜ研究を始めた?

環境問題の中でも、エネルギーは特に大きな問題であるという意識がありました。人類にとって電気、エネルギーは生活から切り離せません。再生可能エネルギーはまだ使いづらく、いまのところは火力発電と原子力に依存しています。
天候の影響を受ける再生可能エネルギー発電は、電気の需給のバランスをとることが難しく、大型蓄電池を用いたシステムの構築が不可欠だと言われています。またEV車における蓄電池の必要性も指摘されています。安全かつエネルギー密度を稼げる電池をつくりたいという思いで、電気化学的な観点から、興味をもって研究を進められると同時に、貢献できると考えました。また今後は、CO<sub>2</sub>の問題にも取り組んでいきたいです。

なにを変える?

太陽光、風力といった再生可能エネルギーでまかなえる世界になるとよいと考えています。
CO<sub>2</sub>も問題視されていますが、環境に対してやさしくエネルギーを使い続けられる方法が必要です。今は社会実装には遠く、基礎的な研究をしていますが、循環社会に向けた一端を担えたら嬉しく思います。
また、サイエンスとしても面白いと感じています。電池の系はとても複雑ですが、その一部分だけでも綺麗な系として説明できることに興味を持って研究を進めています。

なにが必要?

今後は、電気化学的な観点でCO<sub>2</sub>の還元にも取り組みたいと考えています。CO<sub>2</sub>の還元の二大テーマである選択率と反応活性について、電解液のアプローチで濃度やpHに着目して研究を進めていきたいです。特に電極の表面に関心を持っており、実際に反応が起こる電極表面の状態を測定することで、表面pHと反応の選択率や活性の関係も調べていきたいです。

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